「子どもの心はどう育つのか」を読んでみた

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子どもの心はどう育つのか (ポプラ新書)   2019/10/9   佐々木 正美  (著)

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著者は医師であり、ブリティッシュ・コロンビア大学児童精神科、東京大学精神科など臨床医として活動されつつ、育児・障害児教育に関する活動をされていた方です。

なぜこの本を手に取ったのか

この本との出会いは、本屋がある旅館にブックディレクターがいらっしゃって、アンケートに答えたらお勧めをしてくださったというものです。
購入した理由は2つ。

①「エリクソンの」とかいてある。
 今私はミルトン・エリクソンについて興味があります。そして、この著者が学ばれたのはエリック・エリクソン。エリクソン違いではありましたが読んで良かったと思えるものでした。

エリック・H・エリクソン
発達心理学・精神分析の研究者「ライフサイクル理論(心理社会的発達段階)」で有名

②この本のコピーには「生きづらさは、心の発達課題が鍵となる」と記載がありました。
子を持つ親であり、40歳を超えたおっさんとして、自分の生き方など考えてた時期
不惑は、40歳や迷わないことの意味にとどまらず、次に迎える50歳の天命を知るまでに、迷わず道筋を立てて知見を広げていくべき、と広義の意味もあるよう。

臨床にすぐに生きるテクニックなどはありませんが、人間理解という観点より心と社会の影響を知るという観点でお勧めかなと思います。

相手の言動の背景にあるものを知ろうとすると関わり方も変わってくるし、何より尊重できるエネルギーが湧く。そんな感覚を理論的に教えてくれる内容です。

本書の概要

表紙のコピーは「その子らしさを愛してあげて」というものです。

これだけですと、「ありのままの自分を受け入れてもらおうなんて図々しい」という美輪明宏さんの言葉に共感する私としては「・・・・」となりました。

内容を読んでみると、「その子らしさ」というのは都度の発達段階を型にハマった倫理観や常識ではなく「その子らしく」満たすという文脈なのだと思いました。

 エリクソンの発達段階理論をもとにお話が展開されており、8つの段階ごとに目安としての対象年齢、心理・社会的危機、重要な人間関係の範囲という要素が一覧になって書かれています。
著者のエピソードなども通して人の成長の段階と、それぞれに応じた課題をわかりやすくまとめておられました。

 

印象的なトピックス

<乳児期から思春期・青年期まで>
・児童精神科医の医師として今日では、ごく普通の子どもが、ごく普通に育つことが大変難しい時代だと思います。(中略)文化人類学の方面から人間ということを考えますと、地球上ほとんど至るところにいろいろな種族、民族、いろいろな人間が住んでいるわけですが、経済的、物質的に豊かな地域や文化圏に住んでいる人間ほど、外罰性とか他罰性という完成を強く持っていると言われています。(中略)豊かさと外罰性、他罰性、貧しさといわば内罰、自己罰という感情は結びつきやすい。これは人類としての特性だそうです。次いで、過密社会にいる人ほど人間関係が希薄になりやすいというのです。反対に過疎地の人ほど人間関係が濃密です。近隣や友人や親戚、その他の人々との人間関係が濃厚である。過密社会の人ほど人間関係は希薄になりやすい。(中略)貧しさと過疎化というのは、特に過疎というのは相手の人の長所の方に感性を働かせやすくするということです。

=発達段階における二層構造(社会構造=背景、個人の経験=主役)の内、社会構造についてのお話ですね。現代社会は発達課題をこなしにくい社会構造をしているかもしれない。

 だからこそ個人の経験が重要になってくるという話かと解釈しています。

<学童期>
・仲間と道具や知識や体験の社会を共有し合うということは、くだいて言えば友達から何かを学ぶこと、友達に何かを教えることだとというのです。こういう経験をどれくらい豊かにするかということが、子どもの勤勉さを育む上で決定的に重要な要件であるのです。(中略)この経験を十分にしないと、人間は優越感と劣等感を体験しながら生きていくということになります。

=優越感や劣等感をゼロにすることではなく、それらに囚われない生き方ができるかどうか?についてのお話かと思います。

私の30歳代までの過去を振り返ってみると下記のような人間でした。

•機能的価値がなければ無価値とみなす

•共感性が低く、弱みを見せてはいけない

•優越感・劣等感をエネルギー源に動いていた

そこから変化できたのは、30歳代で体験し直せたからだと感じています。

<成人期:親密性>
・自己の確立ということをしっかりして、他者と親密な関係を結ぶ能力、これを親密性と言うのです。個の確立がしっかりして、この成人期の本当の親密さがある。(中略)エリクソンは相手に飲み込まれてしまうような不安をなくして、接することができる親密さだとも言っています。つまり、「相手に自分を賭ける」ことができると言うのです。自分を失ってしまっても、なおかつ自分を失わないほどの自己ができていることだと言うのです。アイデンティティのしっかりしている状態だと言えます。(中略)自分を無にして関わるためには、無にして関わるべき自己がなければならないのです。初めから自分がないようでは、無にすることはできません。

=「自己をもった親密性」についてのお話ですね。

臨床においても

・セラピストとしての自分の考えを持ちつつ

・それを相手に押し付けず、一緒に可能性を探っていく

セラピストとしての「正解」を押し付けないようにと意識できるようになったのは、学んだ知識・技術の影響の他に、信頼のおける周囲の人々のおかげでエリクソンの発達段階の「基本的信頼」「自律性」「勤勉性」などを学び直せたからかもしれません。

・若い成人期に、非常に親しい友人や知人を得ることはとても大事なことです。そうなるためには、繰り返しになりますが、何をおいてもアイデンティティとしての自己の確立が前提として大事です。そういう自己の確立というのは、乳児期の基本的信頼から、自律と自発性や主体性、そして学童期からの勤勉性という経過を経て可能になってくるということです。人間一人ひとりのあゆみには、誰にも完全とか理想的と言うものはなく、みんな種々の程度に不十分で不完全なものですから、いろんな程度に苦悩しながら生きていくのです。

・それまでの発達課題を順調に克服してこないと、その分だけ危機的な状況に陥ります。(中略)相手に近づいてはいけない。相手に気を許せない。拒否された時、拒絶された時に、自分を失ってしまう。あるいは、相手に呑み込まれてしまう。自分を見失ってしまう。こういう恐れに支配された状態のことです。個人としての確立があれば、対人関係は不安定ではないわけです。

=対人関係が不安ではなく、不安定ではない。というところが重要なのかと感じました。

私は基本的に人見知りで、初対面の人と話すのが苦手です(=不安)。

しかし、自分自身は常に更新し続けるので、今ダメだったとしても次までに変われるという確信がある(=自己の確率)ので、不安ではありますが不安定ではないように感じています。

<壮年期>
・本当に思いをいたすということも、孤独な孤立的な状態ではダメなんです。孤独な状態では、ナルシズムになり、自己愛的になりがちです。目や気持ちが次の世代までいかない、周囲の人や次の時代の人たちとのかかわりまで行かないのです。

 =独りよがり、思い込みになりやすいのが孤独な人間だということですね。

人間・知識・技術面それぞれで相性というものが存在します。
•経験年数の長いセラピストでも、若い同僚より学びがある

•逆に、新人でも患者さんとの「相性」で独自の気づきを持っている

この現実を認め、「誰からも学ばせてもらう」態度を持つことで、

•自分の限界を補完してもらえる

•患者さん一人ひとりに最適な「生成性」(ケア・貢献)を発揮できる

不惑のもう一つの意味である「次に迎える50歳の天命を知るまでに、迷わず道筋を立てて知見を広げていくべき」を念頭においてだれからも常に学ばせてもらう態度でありたいと改めて思いました。

・年齢・立場に関係なく意見をもらえることは本当に有難いこと

・「経験年数が上だから優れているべき」という思い込みの否定にもつながる。

<統合期>
・自分の生きた宇宙の中、世界の中、社会の中に、あるいは地球の中に一つの秩序を発見できるかどうか、あるいは求め得るかどうかと言うことです。それから自分が存在した精神的な意義を求めることができるかどうか。それがきた時、人生は「統合期」を迎えたというわけです。

・有史以来の唯一の人生、他の誰のものでもない、他に類のない自分にしかないと言うことです。たった一つの唯一の人生を、言ってみれば取り替えを許されない、だけどあるべき人生だったという風に納得して受け入れる感情、こういう態度、これが「統合」だというふうにも言っています。

=まさに表紙のコピーにある「その子らしさを愛してあげて」につながる内容ですね。

それぞれが唯一の人生でありそれを心から受け入れられる。

言葉ではわかりますが、実際に心からこう思えるにはまだまだ道半ばだと感じています。

•迷った時

•他人の人生を見て羨ましく思った時

•自分の人生に疑問を感じた時

そんな時に、

「私は唯一無二の人生を生きている。そのありのままを、いつか肯定できるようでありたい」と一つの指針として胸に置いておきたいと思います。

・健全で親和性のある心理状態と、その肯定的な素因を妨害しようとする否定的で違和感のある心の働きが、その時々で種々多様な緊張やバランスを作り出しているのが、人間としての存在そのもの。

=常に揺れ動いている非線形としての人間。
確立したといっても普遍であるわけではない。
だからこそ、それを大切にしてくれる環境が生涯を通じて必要なんだと思います。
子育ての本かと思ったら、実は大人の自分を見つめ直す本でした。

自分がセラピストとしてどう壮年期・統合期を迎えていくのか。

その変化を観察しながら年を重ねていきたいと思いますね。

まとめ


本書を読んで、心と社会が人にもたらす影響を知ることができました。

特にセラピストとしての成長においてはともに学び親密性を共有できる仲間がいることが、想像以上の効果をもたらすということを再認識させてもらいました。

 あなたにはただ酒を飲んでわいわい騒ぐだけではなく、気のおけない仲間がいたことはありますか?その存在を意識することでご自分の中の変化に気がつくかもしれませんね。

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